インタビュー【ソディックユーザレポート】 岡山県 加賀郡
株式会社吉備NC 能力開発センター様

精密放電のスペシャリスト
最先端機械を使い、『身体障害者』を対象とした「精神面及び経済面の社会的自立」を目指す企業

安定した品質確保と能率の向上を両立

「金型部品から超合金の部品加工まで放電加工のことならなんでも任せてください」と胸を張る片山雅博社長。
工場を見学すると、様々な形状の製品がある。中にはこれまでに例を見ない方法で加工しているものもあり、目が輝いてしまう。

金型では、ゴム金型やダイカスト金型、順送プレス金型の部品など、2〜3μm狙いの加工もある。部品加工はさらに多種多様となり、ガスエンジンのジェットノズルや、工作機械用の超硬合金ノズル、内接歯車型ポンプの歯車やトルクコンバータ製造用のグラファイト電極加工など、さらにこれらの加工用治具も放電を駆使して製作したものがあり、興味深い加工方法でおこなっている。

いくつかの部品加工では、加工タンク全体に同形状ワークが並び、コツコツと多数個取り加工する機械が見受けられる。
安定した品質確保と能率の向上を両立した生産現場であることが一目でわかる。
このような加工方法が多い理由が、吉備NC能力開発センターにはもうひとつある。
それが「身体障害者の能力開発訓練」である。

加工サンプル

放電加工機に特化した、身体障害者訓練

吉備NC能力開発センターは1982年、身体障害者に先端技術習得訓練を行うことを目的に設立された第三セクターで、「先端技術を障害者に教えるセンターとしては国内初だった」(片山社長)という。

設立時から生産加工部門と訓練部門を持つ。生産加工部門は精密加工を強みとする。一方、訓練部門は、CAD/CAM科と精密加工科に分かれており、2年間かけて障害者に先端技術を教え、30年で81人以上を産業界に送り出している。1988年には「育成した人材の雇用先も必要」との考えから、放電加工を強みとする「オーニック」を設立。その後オーニックの子会社として、磨き加工などを行う「岡山ハーモニー」を立ち上げ、グループ全体で運営を進めている。

現在、3社合計の売上高は約4億円で収益性も高い。片山社長は「当社の目的は障害者の育成だが、当然手段としてお金も稼がなくてはならない」。第三セクターでありながら、収益性への意識が高いのも「民間企業はシビアで動きが早い。常に新しい情報や社会とダイレクトに接する必要がある」という、片山社長の言葉からもうかがえる。
さらに吉備NC能力開発センターの場合、そうした顧客企業は訓練生の受け入れ先ともなりえる。

放電加工機に特化している理由は、「作業者にとって安全・安心だから」という。他の切削系機械と異なり、放電加工機は、鋭利な刃をもった工具を扱う機会が圧倒的に少ない。

そのため、身体に不自由がある場合においても安心して作業を任せられる。機械の動作が切削加工と比較し、ゆっくりであることも重要なポイントだ。
そして、段取り作業時間では、吉備NC能力開発センターの健常者と比較しても、大きな開きは無いという。専任で位置出し作業する人、複数台の放電加工機を一人で操作する人、それぞれ作業予定を工夫し、無駄なく作業をすすめている。
特に、加工タンク全域を利用した多数個取り加工においては、全加工領域にわたって安定した高精度加工を実現するリニアモータ駆動機ならではの長所を最大限に活かす高効率生産を実現している。

また、吉備NC能力開発センターは「身体障害者の精神面及び経済面の社会的自立」を基本方針とし、専門的知識と技術の習得とともに障害者の雇用促進、また実際にその技術を発揮する職場も提供をしている。
このような活動にソディックも賛同し、30年以上にわたり応援をしている。

創業以来81名が訓練課程を修了し、全国各地の職場で活躍している。中には職場で働きながら、陸上競技選手としてパラリンピックに出場している方も。

2年間の訓練課程を習得後、関連会社のオーニック株式会社に就職も可能

習得した技術を、すぐに活かす事ができる環境も整備されている。
従事する方々は、形彫り放電とワイヤ放電の両方の機械を扱い、効率良く作業している。

精密放電のスペシャリストとして

経済産業省の統計によると、2013年の金型メーカーの事業所は15年前に比べ、6割強の8000社程度にまで減っている。金型の供給力低下も問題だが、それ以上に金型メーカーが困っているのが、協力先や外注先が減っていることだ。なかでも「精密加工の外注先となると余計に少ない」と嘆く声も多い。

吉備NC能力開発センターを中核とする吉備NCグループは、放電加工のスペシャリストとして、精密部品に圧倒的な強みを持ち、金型メーカーのパートナーとして、複雑で高度な部品加工の要求に応えている。
特長は±1μmの加工精度に応える加工技術もさることながら、請け負う部品の多様さだ。噴射ノズル、ガスタービンの部品、順送プレスやゴム金型部品など何でも作る。片山社長も「サイズの規制がない限り、無理難題はなんでも聞く」と話す。

その技術力の高さは広く認められており、大手電機メーカーや重工メーカーなど、全国から仕事を受注している。
吉備NC能力開発センターに放電加工機を販売するソディックの久田展生は「放電のプロの我々から見ても治具の使い方など加工ノウハウは凄い」と技術の高さを認める。

最新のワイヤ放電加工機が並ぶ最新のワイヤ放電加工機が並ぶ

金属3Dプリンタ OPM250L 導入

最近では、金属3Dプリンタも導入し、放電や研磨だけでなく最新のものづくりを学べる体制も強化している。
今後について片山社長は言う。「最先端のものづくりを学びたいという障害者を今以上に一人でも多く受け入れたい。そして、社会に出て活躍して欲しい」。

導入された金属3DプリンタOPM250L
金属3Dプリンタで作成したワーク金属3Dプリンタで作成したワーク
片山 雅博 代表取締役社長 片山 雅博 代表取締役社長
吉備NCグループ
株式会社吉備NC 能力開発センター
代表者
片山 雅博 代表取締役社長
創業
1982年
住所
〒709-2343 岡山県加賀郡吉備中央町竹部1973
電話
0866-56-8282
業務内容
身体障害者の訓練、金型・部品の受託加工、省エネ機器・環境改善機器の製作販売
生産設備
[ソディック製] ワイヤ放電加工機 12台
形彫り放電加工機7台
マシニングセンタ3台
金属3Dプリンタ1台
URL
http://www.kibinc.co.jp(外部サイトへ)
オーニック株式会社
代表者
難波 健 取締役社長
創業
1988年
住所
〒709-2343 岡山県加賀郡吉備中央町竹部1973
電話
0866-56-7788
業務内容
金型および精密部品、治工具等の受託加工、PCD・CBN 製品の加工、
放電加工を主体とした各種製品の加工開発
生産設備
[ソディック製] ワイヤ放電加工機 20台
形彫り放電加工機6台
[その他] マシニングセンタ3台
平面研削盤、他数台
URL
http://onik.jp(外部サイトへ)
株式会社 岡山ハーモニー
代表者
難波 健 取締役社長
創業
1982年
住所
〒709-2343 岡山県加賀郡吉備中央町竹部1973
電話
0866-56-7890
業務内容
金型部品、精密部品の製造
URL
http://okayama-harmony-a.com(外部サイトへ)

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