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こんにちは、SurVibes(さぁ!バイブス)編集部です!
今回は、成形不良を抑制できるベント式射出成形機の特徴と、ベントアップの対策について解説します。
シルバーストリークやショートショットといった成形不良や、ベントアップによる機械停止にお困りの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ベント式射出成形機とは
射出成形は、樹脂材料を溶融し金型へ射出することで製品を成形する製造方法ですが、樹脂を溶融する際に発生するガスや材料に巻き込まれた空気、材料に残った水分由来の水蒸気などの気体が原因となり、成形不良を起こしてしまうことがあります。
射出成型機の中には上記のガスを排出するために、材料を可塑化するシリンダに排気穴(ベント孔)が設けられているものがあり、それらをベント式射出成形機と呼びます。

ベント式射出成形機のメリット
ベント式射出成形機には以下のようなメリットがあります。
不良率の削減
ベント孔が設けられていることで、材料の可塑化プロセス中に発生する気体による成形不良を抑制できます。
ベント孔によって抑制できる成形不良には以下のようなものがあります。
シルバーストリーク
金型内に樹脂を流し込む際、樹脂材料に混ざり込んだ気体が金型内で引き伸ばされ、気体の流動痕が樹脂の表面に銀色の筋となって現れてしまう現象をシルバーストリークと言います。

ショートショット
金型の一部に樹脂が充填されない現象をショートショットと言います。
金型にはキャビティ空間の空気の抜け道として、樹脂が流入する側とは逆側に、ガスは通過できるが樹脂は通過できないほどの薄い隙間(ガスベント)が設けられていますが、樹脂に含まれるガスが多くなれば、その分金型内からガスが抜けにくくなり、ショートショットが起きてしまいます。

逃げ場を無くした空気が圧縮され発熱し、ガス焼けを引き起こしています。
乾燥時間の短縮
ベント式射出成形機は、材料に混ざり込んだ水分由来の不良を抑制できるため、樹脂材料の乾燥時間を短縮、あるいはなくしてしまうことができます。
これにより運転開始までの準備や段取り時間を短縮できる他、乾燥機の使用電力を抑えてコストダウンすることも可能です。
金型メンテナンスコストの削減
樹脂の可塑化プロセスで発生するガスは、金型内に堆積する汚れの原因にもなります。
金型の汚れは成形不良につながりますので、定期的なメンテナンスが必要ですが、金型メンテナンスは人手で行う必要があり時間もかかってしまうため、生産性を低下させる大きな要因となります。
ベント式射出成形機は、ガスによる金型の汚れを抑制できるため、成形作業の生産性向上に寄与します。
ベント式射出成形機のデメリット:ベントアップとは
多くのメリットを持つベント式射出成形機ですが、一方でデメリットもあります。
それはベントアップと呼ばれる成形トラブルのリスクがあることです。
本来ベント孔はシリンダ内に混ざり込んだ気体を排出するための排気穴ですが、気体だけでなく一緒に樹脂材料まで漏れてしまう現象をベントアップと言います。

ベントアップの原因と対策
ベントアップの原因としては、以下のようなものが考えられます。
樹脂材料の供給量が多すぎる
樹脂材料の供給量が多いと、ベント孔から樹脂材料が溢れやすくなってしまいます。
対策として、ホッパーから供給される樹脂送り量を抑えましょう。
樹脂供給口に飢餓計量装置を取り付けることで、樹脂送り量を制限することができ、供給過多によるベントアップを抑制できます。
スクリュ回転速度が速すぎる
ベント孔の手前とその先ではスクリュ形状が異なる設計が一般的で、手前(1段目)よりもその先(2段目)の方が樹脂の輸送力が大きくなるように設計されています。
そのため、ベント孔付近では樹脂が滞留しないようになっていますが、それでも2段目の輸送能力を超えるような回転数ではベントアップが発生してしまいます。
対策として、スクリュ回転速度を下げる方向に調整しましょう。
上記の理由から、ベント式射出成形機ではスクリュ回転数が制限され、可塑化能力が小さくなることが一般的です。
ベントアップを克服した射出成形機
メリットが大きいベント式射出成形機ですが、ベントアップの課題を抱えているのが実情でした。
ですがソディックが開発した射出成形機であれば、ベント式射出成形機のメリットを享受しつつ、ベントアップを抑制することが可能です!
V-LINE®方式によるベントアップの抑制
ソディックの射出成形機は、独自技術であるV-LINE方式により、ベントアップ発生リスクを抑制しています。
V-LINE®方式については以下のページで解説しておりますので、ぜひご覧ください。
V-LINE®は、可塑化スクリュが前後に動かないため、ベント孔とベント用スクリュ形状の位置関係が変わらず、ベントアップが起こりにくくなっています。
AI-VENT
従来のベントアップ対策は『ベントアップを検知し、機械を自動停止させる』というもので、成形作業の自動化における大きな妨げとなっていました。
そこで、『ベントアップの兆候を検知し、未然に防ぐことでそもそもベントアップを発生させない』というコンセプトを基に開発された自動条件補正機能が『AI-VENT』です。

ベントアップの兆候をセンサが検知すると、スクリュの回転速度とホッパーから供給される材料送り量を自動で調整し、成形機を停止することなくベントアップを防ぐことができます(AI-V制御)。
また、AI-VENTは単にベントアップを防ぐだけに留まらず、『ベントアップの兆候が見られなければ徐々に材料送り量を上げていく』『ベントアップの兆候が見られた際は機械を止めずに成形条件を補正する』といった調整を繰り返すことで、ベントアップを起こさない最適可塑化条件へと自動で導いていきます。
まとめ
今回は、ベント式射出成型機のメリットと、デメリットであるベントアップについて解説しました。
また、ソディックが開発した射出成形機や自動条件補正機能を利用すれば、ベント式射出成形機のメリットを最大限享受しつつ、ベントアップも抑制することが可能です。
ソディックの射出成形機にご興味がございましたら、ぜひ以下のフォームよりお問い合わせください。