ソディック独自機構『V-LINE®射出成形機』の開発秘話をご紹介

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産業機械
公開日2024.12.18 更新日2025.02.04
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こんにちは、SurVibes(さぁ!バイブス)編集部です!

今回は、ソディックが開発したV-LINE®射出成形機の開発秘話をご紹介します!

放電加工機メーカーとして創業したソディックが、どのようにして射出成形機の開発を始めたのかという経緯や、V-LINE®誕生に至るまでのブレイクスルーについてもご紹介しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

V-LINE®とは

V-LINE®は、NC工作機械メーカーでもあるソディックが独自開発した、射出成形機構造の名称で、『樹脂の溶融状態』、『計量樹脂密度』、『実充填量』の3つを安定させることによる、品質安定性を特長としています。
V-LINE®の機構やメリットに関しては、以下の記事で解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。

V-LINE®射出成形機開発秘話

ここからは、V-LINE®射出成形機の知られざる開発秘話をご紹介いたします。

射出成形機開発現場
射出成形機開発当時の現場の様子

NC工作機械メーカーであるソディックが、射出成形機を開発するきっかけとなったのは、『お客様の声』でした。
ソディックの放電加工機により製作した精密な金型を利用して、プラスチック製品を生産されているお客様より、「金型の精度は上がったものの、従来の射出成形機では思うような精密成形ができない」というご相談をいただくようになり、お客様のお悩みを解消すべく、1988年に射出成形機の開発が始まりました。

開発の難所

射出成形機の開発にあたって、まず第一に調査したのは「従来の射出成形機のどこに改良の余地があるのか」という点でした。
研究を重ねた結果、従来の射出成形機では、計量した樹脂材料を金型内に充填する際に、樹脂の逆流(バックフロー)が発生し、成形結果が不安定になっていることを突き止めました。

樹脂材料を溶融・混錬するスクリュを押し出すことで、射出・充填を行う一般的なインライン方式は、スクリュが前進する際になりゆきで逆流防止弁が閉じる機構となっており、樹脂材料の逆流が発生してしまいます。
通常は、この逆流をある程度受容して条件設定するのが一般的ですが、高い品質が求められる精密成形を行う場合や、品質を安定させて歩留まりを向上させたい場合などでは、この逆流による充填量のばらつきが問題となる場合もあります。

しかし、続いてぶつかったのは、どうすればこの問題を解決できるのかという課題です。
開発は困難を極めましたが、従来からあるスクリュプリプラ方式に再度着目し、独自の新技術により大幅改善したことで、ソディックはこの課題を乗り越え、安定した精密成形を実現するV-LINE®射出成形機が誕生しました!

スクリュプリプラ方式
樹脂材料を溶融・混錬するスクリュと、計量・射出するプランジャを別個の機構に切り分けた方式(現在のV-LINE®の元となった技術です)

スクリュプリプラ方式からの改善点

現在のV-LINE®に至るまでには、従来のスクリュプリプラ方式が抱えるいくつもの課題を乗り越える必要がありました。
その中でも大きなブレイクスルーとなったV-LINE®射出成形機の四大発明をピックアップしてご紹介します。

①スクリュ先端逆止

当時のスクリュプリプラ方式における逆流防止機構は『ボールバルブ方式』が主流となっていました。

ボールバルブ方式

穴の開いたボール(ボール弁)を90度回転させることで、流路を開いたり閉じたりする方式。
外部に接続されたレバーやハンドルを操作することで、流れを制御することができます。

ボールバルブ方式
ボールバルブ方式のイメージ
ボールバルブ方式
ボール弁を回転させ、流路を閉じた状態

しかしながら、ボールバルブ方式は、ボールを回転させるための隙間が外部とつながっているため、大きな圧がかかると樹脂が漏れ出してしまうという致命的な問題がありました。
また、外部に漏れ出すほどの大きな圧がかからない場合も、ボール弁の隙間に入り込んだ樹脂が時間経過で炭化してしまい、ボール弁が90度往復回転する際に流路側へ流れ、成形品に混入してしまうことがあります。

また一方で、スクリュプリプラ方式におけるもう1つの逆流防止機構に『ボールチェックバルブ方式』というものもあります。

ボールチェックバルブ方式

ボールチェックバルブ方式は、ボールバルブ方式とは異なり、ボールに穴は開いておらず、ボール自体が移動することで流路を閉じる仕組みになっています。
樹脂の流路に埋め込まれたボールが、充填時の圧によって浮き上がることで、流路を遮断します。

ボールチェックバルブ方式
ボールチェックバルブ方式のイメージ
ボールチェックバルブ方式
充填圧によってボールが浮き上がり、流路が閉じた状態

こちらはボールバルブ方式とは異なり、逆流防止機構が機械の内部で完結しているため、外部への樹脂漏れはないのですが、充填時の圧力によってなりゆきで逆流防止弁を閉じるという点でインライン方式と共通しており、結局逆流の課題が解決できません。

ここまでの情報を整理すると、安定した精密成形を実現するためには、逆流防止の機構を機械の内側だけで完結させつつ、充填時のなりゆきではなく能動的に逆流防止することが求められます。
そこで誕生したのが『スクリュ先端逆止』です!

プランジャを押し出して充填圧をかける前に、スクリュをわずかに前進させて流路を閉じるこの機構は、外部への樹脂漏れと充填時のバックフローを同時に解決する画期的な発明でした。

流路の状態
流路が開いている状態
流路の状態
プランジャを押し出す前に、スクリュを前進させて流路を閉じる(逆流防止)

②フロントローディング

続いてご紹介するのは、シリンダの前方から樹脂を供給する『フロントローディング』です。

従来のスクリュプリプラ方式では下図のように、シリンダの中腹に樹脂の供給口が設けられるのが一般的だったのですが、この構造は圧力に弱く、充填時に大きな圧力がかかってしまうとシリンダが割れてしまうという課題がありました。

スクリュプリプラ方式
従来のスクリュプリプラ方式の樹脂供給機構①

シリンダが割れてしまうことを避けるために、樹脂供給口をシリンダよりも前方の流路で合流させる構造の成形機もあったのですが、こちらはこちらで別の問題を抱えています。
確かに圧力には強くなるのですが、下図のような構造では、充填量が少ない(保圧が低い)場合、プランジャの表面近傍の樹脂がほとんど入れ替わりません。
その結果、色替えや樹脂替えが困難なだけでなく、時間経過と共に樹脂材料が炭化して、プランジャにこびりつき、成形不良や機械トラブルの原因となってしまいます。

スクリュプリプラ方式
従来のスクリュプリプラ方式の樹脂供給機構②

したがって、従来のスクリュプリプラ方式が抱える課題を解決するためには、圧力に強い構造にしつつ、プランジャ近傍の樹脂材料が循環する造りを実現する必要があります。
そこで開発されたのが『フロントローディング』です。

この構造にすることで、シリンダの耐圧性を確保しつつ、シリンダ近傍の樹脂も滞留することなく入れ替わるようになりました。
これにより、色替え・樹脂替えが容易になり、炭化物による成形不良も抑制できます。

シリンダの様子
シリンダの前側から樹脂を供給することで、圧力に強い構造になります。

③プランジャ先端円錐形状

上述したプランジャ表面の樹脂材料の流れに関連する発明として、『プランジャ先端円錐形状』があります。

メディア画像

プランジャの先端をフラットな形状にするのではなく、円錐形状とすることで、樹脂材料がプランジャ表面を循環するように流れるようになり、樹脂材料の滞留・炭化を抑制することができます。

④バイパス穴

最後にご紹介するのは『バイパス穴』です。
従来のスクリュプリプラ方式では、シリンダの下側に樹脂材料が滞留しやすくなっており、炭化した樹脂が成形不良や機械トラブルの原因となっていました。
また、樹脂が残ってしまうため、色替えや樹脂替えも困難になります。
そこで、下図のようにシリンダの下側からも樹脂が流れるようにバイパス穴を設けたことで、ソディックはこの課題を解決しました!

バイパス穴
重力によってシリンダの下側に樹脂材料が滞留する
バイパス穴
バイパス穴を設けることでシリンダの下側からも樹脂が流れるようになる

開発当初は上述のようにバイパス穴を設けることで樹脂材料の流れを改善した経緯がありますが、現在では構造の見直しが進み、下図のように、シリンダの下側から一本の流路で樹脂を送り出す構造が標準化されました。

V-LINE®構造標準仕様
現在のV-LINE®構造標準仕様

お客様の声

ソディックユーザレポートでは、V-LINE®射出成形機を使用しているお客様からのお声を紹介しております。
V-LINE®射出成形機がどのようにお客様のお役に立っているか、ぜひご覧ください。

まとめ

今回はソディックが開発した独自構造『V-LINE®射出成形機』の開発秘話を解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

国内のNC工作機械製造・開発のパイオニアであるソディックが、射出成形機の開発に挑んだ背景にあったのは、お客様のお困りごとを解決したいという想いでした。

これからもソディックは、「世の中に無いのならば自分たちが作り出す」という開発理念にしたがって、お客様の声に耳を傾け、常に限界に挑戦し、“豊かな未来創り”と世界の“ものづくり”の発展に貢献してまいります。

オウンドメディア『SurVibes(さぁ!バイブス)』では、その他にも開発秘話記事を掲載しておりますので、ぜひ他の記事もご覧いただけますとうれしく思います。
最後までご覧いただきありがとうございました!

執筆者
 SurVibes編集部

SurVibes編集部

オウンドメディアの記事制作を担当しております。それぞれ違うバックグラウンドを持った20、30代メンバーを中心に制作。新しいことにチャレンジしながら、多くの先輩、関係者の皆様に支えてもらい毎日が勉強です!「つくる」にフォーカスした企画をいつも探しています。

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