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こんにちは、SurVibes(さぁ!バイブス)編集部です!
金属などを加工する工作機械の一つであるワイヤ放電加工機は、加工精度の高さや高硬度材料を加工できる特長から多くの製造現場で活用されています。
この記事では、ワイヤ放電加工機の原理や特徴、導入・使用時の注意点を解説します。
目次
ワイヤ放電加工機とは
ワイヤ放電加工機は、電圧をかけた細いワイヤ線を糸ノコのようにして加工物を非接触で溶断する工作機械です。
ワイヤ放電加工機による加工をワイヤカットと呼ぶこともあります。
ワイヤ放電加工機は非常に高い精度で加工できる特長から、金型や自動車部品などの精密加工に適しています。

ワイヤ放電加工機の構造
ワイヤ放電加工機は基本的に下図の要素で構成されています。

テーブルに固定された加工物は、テーブル自体がXY方向に移動することで相対移動し、装置上部から下部へ絶えず走行するワイヤ電極線によって2次元加工されます。
また、ほとんどのワイヤ放電加工機にはテーパカットユニット(UV軸)が実装されており、これによりワイヤ電極線を傾けて加工することで上下異形状をはじめとした複雑な加工を行うことができます。
XY軸およびUV軸はNC電源装置で制御されているため、ワイヤ放電加工機による加工は加工形状のプログラムと設定された加工条件に従い自動で実行されます。
加工物は加工液に浸された状態で加工されますので、ワイヤ放電加工機には加工液を供給・循環させるためのサービスタンクと送液ポンプが備えられています。
水加工の場合には、純水器(イオン交換樹脂)が装備され、加工中に適時通水することで加工液の比抵抗値を一定に保ちます。
加工液については以下の記事で解説しておりますので、詳しくはそちらをご覧ください。
また、ワイヤバケットに排出される使用済みワイヤ電極線は、放電加工により消耗しているためそのままでは再利用することはできませんが、素材によっては新しいワイヤ電極線の一部としてリサイクルすることも可能です。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
ワイヤ放電加工(ワイヤカット)の原理
放電加工は電極(ワイヤ線)に電圧をかけ、電極と加工物を接近させることで両者の間隙の絶縁を破壊し、放電現象を発生させる加工方法です。
ワイヤ線と加工物の間は電気の流れにくい加工液で満たされていますが、両者が近づくことで電極から加工物へ雷が落ちるように電気が流れ(放電現象)、その際の熱で加工物表面を溶融します。
発生した加工くずは加工液により排出され、電極と加工物の間の絶縁は回復しますが、再び電極に電圧をかけることで再度放電を発生させます。
このサイクルを毎秒数千~数万回繰り返すことで加工物表面を切削していきます。




ワイヤ放電加工機のメリット
ワイヤ放電加工機には、主に以下のようなメリットがあります。
精密加工が可能
ワイヤ放電加工機は放電エネルギーを小さくするといった工夫により、微細加工や複雑形状の加工も可能です。
工作物の形状や加工条件によっては、マイクロメートル単位の高精度加工が可能になります。
ワイヤ放電加工機が高精度加工を実現できる理由の1つにワイヤ電極径の細さが挙げられます。
ワイヤ電極径は一般に0.05mm~0.3mmと非常に細く、切断幅が他の工作機械と比べて小さくなるため、微細な加工を実現することができます。
また、加工物とワイヤ線が接触しないため、加工物に大きな力が加わることはなく、変形やひずみが生じにくいこともワイヤ放電加工機のメリットと言えます。
高硬度材料の加工ができる
高硬度材料の加工ができる点も、ワイヤ放電加工機のメリットです。
電気さえ流れれば、どんなに硬い材料であっても加工することができます。
マシニングセンタなどの他の工作機械で高硬度材料を加工する場合、加工物よりさらに硬い工具を用いる必要があります。
そのため、工具の管理が大変であったり、そもそも加工できなかったりといった問題が生じえます。
そういった理由から、高硬度材料を加工したいという場合にはワイヤ放電加工機が採用されるケースが多くなります。
作業者の教育コストが比較的低い
ワイヤ放電加工機はマシニングセンタなどと比べて加工作業がシンプルで作業者の技術的ハードルが比較的低いというメリットもあります。
マシニングセンタであれば加工物の種類や加工フェーズによって何度も適切な工具を選定して取り換える必要がありますが、ワイヤ放電加工機は基本的に同一の電極線で加工します。
また、ソディック製のワイヤ放電加工機をご利用のお客様であれば、習熟度に合わせた講習プログラムを受講いただけます。
ご興味がございましたら以下のフォームからお問い合わせください。
ワイヤ放電加工機の注意点
ワイヤ放電加工機の利用に当たっては主に以下のような注意点があります。
加工条件の確認
ワイヤ放電加工機は放電現象を利用するという性質上、電気を通さない材料は加工できません。
また、ワイヤは装置の上から下へ張られているため、切断面は加工物天面から底面まで貫通することになります。
したがって底を残す形状は加工できません。
加工物の材質や加工したい形状が、ワイヤ放電加工機に適しているかどうか確認する必要があります。
加工速度の問題
ワイヤ放電加工機は、加工物を少しずつ融解させながら加工していくという特性上、マシニングセンタや旋盤加工機と比較すると加工速度が遅く、量産対応も可能ですが、どちらかと言うと高精度加工に適している傾向にあります。
また、ワイヤ放電加工機の中でも、水を主成分とした加工液を使用するタイプは加工速度が比較的に速く、反対に油を主成分とした加工液を使用するタイプは加工速度が遅い反面精密加工に向いているといった特徴があります。
作りたいものや現場のニーズに合わせて、適切なワイヤ放電加工機を選定することが重要になります。
安全対策が必要
油を主成分とする加工液を用いる場合、危険物保安技術協会の「放電加工機の火災予防に関する基準」で定められた火災予防が必要になります。
安全対策については以下の記事でも触れておりますので、そちらも併せてご覧ください。
まとめ
ワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極線と加工物の間に放電現象を発生させ、加工物を溶断する工作機械です。
高精度加工、高硬度材料の加工、作業者の教育コストの低さといったメリットから様々な製造現場で活用されています。
ソディックはNC放電加工機のパイオニアとして、1981年の発売から40年以上にわたりワイヤ放電加工機を製造・販売してきた実績がございます。
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